紫陽花の咲くころに

読書や映画鑑賞の記録など、つらつらと。

SEALDsはなぜ若者から支持を集めることができなかったか。

 参議院選挙から早くも一週間が経ちました。自公をはじめとする、いわゆる改憲勢力が衆参共に3分の2の議席を確保したことで、憲法改正が現実の政治日程にのぼることになりました。

 しかしながら、世論の関心は7月31日に投開票される東京都知事選挙に向かってしまい、憲法改正に関する議論は選挙前と大きな変化はないように思えます。

 今回の参院選において、初めて18歳・19歳の若者に選挙権が付与されました。野党勢力は、改憲勢力に3分の2を取らせないことを旗印に結集しましたが、選挙結果は自民党をはじめとする改憲勢力の勝利に終わりました。

 党内に改憲派を抱えながら、共産党社民党に協調することで、民進党は前回参議院選挙の獲得議席である17議席を超え、32議席を獲得することができました。

 要因としては、参議院選挙の選挙区選挙の内、32ある一人区で民進・共産・生活・社民の野党4党の選挙協力が成立した影響があると考えられます。

 昨年の安保法制をめぐる一連の騒動をきっかけに、野党4党は協力関係を醸成してきましたが、これを後押ししたのが学生団体SEALDsや市民団体でした。

 SEALDsは従来のデモ活動と一線を画した、ラップやコールを交えた街宣活動を行い、注目を集めました。今回の参院選でも、SEALDsの中心人物である奥田愛基さんらが応援演説を行っていました。

 では、SEALDsの出現は、政治離れが著しいと言われている日本の若者を突き動かしたのでしょうか。残念ながらNoと言わざるを得ません。特に今回新たに選挙権を得た10代では、自民党に投票した人々が最も多いという出口調査が出ているようです。

【参院選】18、19歳の投票傾向は自民党が40%でトップ 民進党は全世代より低調 - 産経ニュース

 

 なぜSEALDsは若者の心を動かさなかったのでしょうか。私は大学生なので、なんとなく同年代の心情を慮ると、SEALDsが「意識高い系」の典型に見えたのでしょう。

 多くの大学生は、社会人や中高生より有り余る時間を使って、遊びにサークルやバイトに精を出してるものです。そんな中、政治や安保活動などというお堅いテーマを勉強している団体というのは、大学生の中で異質な存在になってしまうのは、致し方ないのでしょう。

 私のSEALDsに対する印象というのは、「立憲主義を壊すな」という主張に代表されるように、教科書通りの主張をしているので、学問的には正しい主張をしている団体という印象です。

 これがよくなかった。多くの「普通の学生」にとって、彼らの主張は背伸びしているようにしか見えなかったのです。

 どんなに理論的には正しい主張をしていても、対象とする人々(ここでは若者)の心に響かなければ、政治運動としては失敗なのです。 

 彼らの主張に耳を傾け注目したのは既成政党や、かつてのデモ運動(彼らにとっての青春時代)を忘れられない一部の大人たちでした。

 しかし、現実の政治においてルールを設定する立場にいるのは大人たちです。団体が大きくなり発言力を増せば、それに群がる汚い大人たちの餌食になってしまうでしょう。

 SEALDsの中でも、リーダー層にいる一部の人々は(学術であれ政界であれ)自分のキャリアパスに、SEALDsの活動をうまく利用したのではないでしょうか。

 SEALDsそのものは8月15日に解散してしまいますが、その活動に共感し、後から活動に参加した「意識高い系」の人々は今後どうするのでしょうか。

 真面目であるが故に、政治活動にのめりこみ、大人たちに利用され使い捨てされるのが関の山では。